教職員インタビュー

美術を通して得られる「気づき」を
大切にしてほしいと思います。

担当教科/美術 伊藤 ちあき 教諭

伊藤ちあき教諭 近影

高校の教師という仕事を志したきっかけを教えてください。

高校時代の美術の先生がとても熱心に指導してくださり、私が美術について深く考え、美大を受験するきっかけを作ってくれました。子供の頃から絵を描くことは好きでしたが、美大に行ってまで勉強をするつもりはなくて、美術で仕事をすることは考えにくいと思っていました。しかし、先生の「絵画とは精神である」という言葉が心に響き、人生を掛けて美術と向き合ってみようという気持ちにさせてくれました。就職を考えたときに、自分の作品を制作しながらも、真摯に指導をしてくれた先生のことを改めて思い返し、教員という道に進むことにしました。

美術を学ぶ生徒にどんな手ごたえや楽しさを感じてほしいですか?

美術を学ぶ目的は、絵が上手く描けるようになるとか、かっこいい立体作品を作れるようになるということだけではないと思います。対象を観察したり、作る工程で実験したり、失敗したりして何かに気付くことの方が大切なことだと考えていて、そのことは美術以外の勉強や生活の中でも役に立つと思います。
何かを創りだすということは、時に苦しく、難しいことでもありますが、それに向き合う過程でわくわくしたり、ドキドキしたりすることもあるでしょう。必死に取り組んで作品ができあがった時には、達成感と作品に対する愛着がわくのではないかと思います。「気づき」をもつことで、美術を学ぶ全ての生徒に生活の楽しさを感じて欲しいですね。

そうした成長のために、伊藤先生が特に意識して指導いることは何ですか?

私は、生徒自身の「気づき」を大切にしたいと思っていますので、教えるというより生徒が自分自身で考えるという授業を心がけています。美術とか芸術って正しい答えがある訳ではないので、できるだけいろいろなことを試して、失敗して、「これかな?」というのを自分で見つけさせたいと考えています。そのために、生徒が失敗しても大丈夫だと感じる空気とか雰囲気を作ることを意識しています。作品を創るうえで、何かうまくいかないことがあったり、悩んでいたりしたら、見守りつつもさりげなくいくつかの選択肢を提案して、最後は生徒自身が選んだという自信をもてるような授業をするように努めています。

芸術を学ぶことの意義、芸術そのものの意義について、先生の考えを教えてください。

STEAM(スティーム)教育というのがありますよね。Science(科学)+Technology(技術)+Engineering(工学)+Mathematics(数学)にArts(芸術・教養)を加え、その頭文字を取った言葉です。これ、Arts のないSTEM(ステム)だと、あまり面白くないと思いませんか?
一例を挙げれば、洗濯機や掃除機などの家電は機能性が非常に重要だけれど、デザインや色などが魅力的じゃないと、買いたいという気持ちになれないですよね。そういう人間の感性に訴えかける部分が「Arts」だと思うので、すごく重要だと思います。ですから、社会では人の心を動かすものづくりをして欲しいと思っています。

教師として、特にやりがいを感じるのはどのような時ですか?

生徒が魅力的な作品を創ってくれた時ですね。この仕事の良いところは、生徒を通して日常の中に刺激や変化を感じられるところだと思います。毎年違う生徒と出会って、その生徒から生まれる新しい作品を見ることができるので、とても楽しいしやりがいを感じます。
私が教えることはいつもそんなに変わらないのに、生徒の答えは毎回みんな違っていて、驚かされることもしばしばです。生徒に何かを教えるということ以上に、生徒から私が与えてもらえるものがあるからこそ、この仕事を続けてこられたのではないかと思います。

浜松学芸高校にはどんな魅力があると思いますか?

私の感じる浜松学芸高校の魅力は、とても自由なところです。そうはいっても生徒にとっては、制服もあるし、校則もそれなりにありますから不自由に感じるかも知れません。でもそういうものとは別に、考え方とか、思想が自由だと感じています。
校則は、その自由を守るために存在していて、今後変えていくこともできるでしょう。けれど、この思想の部分の自由は、ルールを変えるだけで得られるものではありません。これが校風というか、雰囲気だと思うのです。先生も生徒もある程度の節度を保ちながらも、思ったことを言える。上下関係に縛られ過ぎない。やりたいこと、やってみたいことに挑戦できる。それが浜松学芸高校なのではないでしょうか。

浜松学芸高校への入学を検討する人に向けて、メッセージをお願いします。

学芸には、いろいろな生徒がいます。勉強が得意な子、少し苦手な子、人前にでるのが好きな子、おとなしい子、美術や書道、音楽を深く学びたいと思う子、静かに研究してみたい子などなど。どの学校にもいそうだけど、よりこだわりが強くて個性的な人達が多いように感じます。そんな人々が共存していて、何かを創っていこうとする勢いのある学校だと思います。また、古い伝統にとらわれ過ぎず、社会の動きや時代を意識して変化することができる元気な生き物のような学校です。その生き物の細胞の一つひとつが、教員や生徒なのではないかと思うのです。その生き物の中に入って一緒に動きまわってみてはどうでしょう。