高校教育

芸術科 美術 コース

美術コースの学び
遠鉄百貨店35周年記念イベント

■「遠鉄百貨店35周年記念イベント」

今年で設立35周年を迎えた浜松駅前の遠鉄百貨店の記念イベントへ参加しました。遠鉄百貨店3Fの連絡通路を会場に、美術コース生徒とバルーンアーティストのYOHEIさんが「ひらけ!ミライBOX」というテーマで展示デザインをしました。

課題や作業状況を共有しながら、
アドバイスし合って制作しました。
蜂須賀 千幸/油絵専攻
(豊川市立東部中出身)
――「遠鉄百貨店35周年記念イベント」でどんなことを行いましたか?
企画のコンセプトや内容の草案、学校側の意見をまとめる役割を務めました。また、風船を作ったりレイアウトしたりする飾りつけの作業や、パネルのイラスト制作を行いました。
―――準備段階の課題を乗り越えるために、どんな努力や工夫をしましたか?
来場した人に「楽しい」と思ってもらうためにどうするかを友だちや先生と話し合い、意見のすりあわせを行いました。お互いの課題や作業状況を共有し、アドバイスし合いながら制作しました。
――このイベントで感じた面白さややりがいを教えてください。
人に喜んでもらえる方法を考えることの面白さや、自分の意見が採用された時の達成感がありました。プロである大人の方たちと何度も話し合い、議論することも貴重な経験でした。お客さんの視点を第一に考える力や、要点をしぼって自分たちの意見をまとめる力が身についたと思います。
――他にはどんな形で地域と関わっていますか?
たとえば「コネクテッド・インク」という取り組みでは、与えられた課題に対して自分たちなりの答えを見つけ、それを伝えるのに一番良い表現方法として動画を制作します。この取り組みでも大きな達成感がありました。自分たちで美術コースや地域の魅力を伝えていくことに楽しさを感じています。
――所属する専攻ではどんなことに力を入れていますか?
油絵専攻では、油絵の具でしかできない表現を学び、それを活かして色彩構成を行います。生徒によって表現方法が違い、キャンバスに対してどのような仕事をするかによって、仕上がりもまったく違うものになります。毎回の課題ごとに自分とは違う考えを学ぶことができます。
――改めて、美術コースにはどんな魅力があると思いますか?
美術コースには、自分とは違う考えや感性の人が多く集まっています。そんな環境で高校時代を過ごすことによって、新しいことを発見し自分を見つけることができます。また、専門的な知識を持つ先生方からは、将来に向けて必要な情報を得ることができます。
――美術コースでの学びの成果を活かして実現したい目標を教えてください。
美術大学に進学し、自分で作品展を企画したり体験型のイベントを各地で開催したりしたいと思います。より多くの人と関わり、自己の確立をめざしたいです。

2023年度 受賞作品

令和5年度静岡県読書感想画コンクール
一般社団法人 静岡県出版文化会理事長賞
「心の苦しみ」

主人公が前に進もうとする、
力強い姿を表現しました。

苦しくつらいことがあっても前に進もうとする、主人公の力強い姿を表現した絵です。先生からの「鏡の割れ方を自然に見せられるように、不規則な割れ方にした方がいい」というアドバイスを受け、その点を意識的に表現しました。
賞を受賞できると思っていなかったので、この結果にうれしさを感じています。うまく描けない時期もあり悩んだこともありますが、受賞によって少し報われた気がしました。私の将来の目標は、漫画家になることです。美術コースでの学びを活かして、これからも夢に向かって突き進みたいと思います。

大石 心晴/油絵専攻
(浜松市立篠原中出身)

令和5年度静岡県読書感想画コンクール
自由部門最優秀賞
加藤柊俐

令和5年度高校生国際美術展
高校生国際美術展実行委員会最高顧問賞
石野 ひなの
学校賞(最優秀校賞)も同時受賞

これまでの実績紹介

【2023年度 主な受賞歴・課外活動】
《第24回 高校生国際美術展 美術の部》
  • ・高校生国際美術展実行委員会最高顧問賞 石野ひなの
  • ・優秀賞 永田乙葉
  • ・奨励賞 齋藤小雪 杉浦ゆり彩 鈴木 玲凪 村井紗和子 諸星杏実
  • ・学校賞 最優秀校賞
《令和5年度静岡県高等学校総合文化祭美術・工芸部門/第71回静岡県高等学校美術・工芸展》
  • ・優良賞 王鈺涵 川合麻凛 松浦日和
  • ・特選 太田かれん 加藤柊俐
《令和5年度静岡県読書感想画コンクール》
  • ・最優秀賞(1位)※読書感想画中央コンクール出品
    加藤柊悧
  • ・優秀賞(2位)※読書感想画中央コンクール出品
    大石心晴
  • ・優良賞
    川嶋杏朱 蜂須賀千幸 嶋野瑚子 大𣘺あゆみ 吉原瑠美
  • ・奨励賞
    小林優那 志村茉美 内藤そよ
第35回読書感想画中央コンクール高等学校の部
  • ・文部科学大臣賞(1位) 加藤柊悧

■在校生の声 vol.1

「デッサン力」や
「物を見る力」が磨かれました。
大村 優美香/日本画専攻
(浜松市立神久呂中出身)
――美術コースに入学した理由を教えてください。
私は以前から、絵に関わる仕事に就きたいと考えていました。そのために美術大学に入学したいという思いがあり、実力をつけるために学芸の美術コースに入学しました。
――美術コースの学びにはどのような特長がありますか?
しっかりと実力がつくように、カリキュラムが工夫されています。専攻に分かれる前の1年次は、4つの専攻の学びを体験することができます。「自分が何を学んでいきたいのか」を考えることができて良いと思います。
――先生方の指導について、印象に残っていることを教えてください。
課題の講評の時、一人の先生からだけではなく、何人かの先生方から意見を聞けることが良かったと思います。
――美術コースのイベントについて印象に残っていることを教えてください。
文化祭で、美術コースとしてパフォーマンスを行ったことが思い出に残っています。クラスでひとつの作品をつくることができるのは、美術コースならではだと思います。大変ではありましたが、終わった後の達成感もありとても楽しかったです。
また、書道コースの生徒と一緒に作品をつくることができるのも魅力だと思います。
――美術コースで「楽しさ」を感じるのはどのような時ですか?
特に楽しさを感じたのは、課外活動で校外に絵を描きに行ったことです。課外活動では、自分がやりたいことに参加できるので、私は積極的に参加しました。学校外の活動に自分から参加することでやりがいと楽しさを感じることができます。
――美術コースでどんな力が身につきましたか?
その力を活かしてどんな目標を実現したいですか?
入学時から比べて、「デッサン力」や「物を見る力」が高まったと感じます。また、一つの絵を完成させる力もつきました。私が静岡県高等学校総合文化祭の西部展に出品した絵は、入学前には描いたことがないようなとても大きな絵です。そのため心配がありましたが、しっかり描き切ることができました。美術コースで学んだデッサンの力を活かして、背景を描けるようになりたいと思っています。

■先輩の声 vol.1

冨田 楓さん (株)フジテレビジョン
  • ■2014年度卒業
  • 筑波大学芸術専門学群
    日本画コース卒業
  • 筑波大学大学院人間総合科学研究科
    芸術専攻
    日本画コース修了

コンセプトの大切さを学んだ経験が、
デザインの仕事に役立っています。

――学業面で、高校時代に特に力を入れたのはどのようなことですか?
高校に入学した頃はデッサンも作品もどう描いていいのか分かりませんでしたが、クラスメイトの作品を見て「自分よりも絵が上手い人がこんなにたくさんいるんだ」と衝撃を受けました。
がむしゃらに描いてもこの人達には勝てないと思い、美大や藝大の合格作品や画集をたくさん見て、どのようにモチーフや物事を捉えているのかをインプットするようにしました。国宝や重要文化財から日本美術院展覧会(院展)などの公募展まで、実際に多くの作品を見ることで自分の表現の引き出しが増えたと感じています。高校2年の時には、画家の千住博さんの作品と言葉に心を打たれ、いかにして彼の思想や表現を自分に落とし込めるかを考えるようになりました。
また、大学受験では美術以外の教科も必要不可欠で、授業で学んだ内容を手帳にまとめてずっと持ち歩いていました。自転車での通学時間も無駄にしたくなかったので、赤信号で止まったときに手帳を見て、次の赤信号までに暗記していました。赤信号以外手帳が見られないのがもったいなくて片道7キロを90分かけて歩いて手帳を見ていた時期もあります。でも、この勉強法は何度か試してやめました(笑)。
――高校生活全体を振り返って思い出に残っていることを教えてください。
夏休み、冬休み、春休みも同級生とアトリエに集まって制作を進めていました。お昼にそれぞれコンビニで買ってきた食材を組み合わせて食べていた時間が本当に楽しかったです。(サバ缶とパイナップルが意外と合いました。)
また、大学受験のために作成したポートフォリオを提出した翌日、疲労で高熱を出してしまったことも記憶に残っています。次の日の体育祭にどうしても出たくて、先生の反対を押し切りクラス対抗リレーの決勝だけ出場しました。ゴールテープを切ってみんなで優勝を分かち合ったのは良い思い出です。代償として体調の回復が長引いて2〜3日学校を休んでしまいましたが・・・・・・。
――卒業生の方の目から見た浜松学芸高校の魅力をご紹介ください。
実際に美大・藝大受験や作品制作を経験してきた先生方から専門的に指導を受けられるという環境はとても恵まれていると思います。公募展に出品する機会があったのも自分にとっては非常に良い経験でした。大学に受かるためのデッサンスキルを身につけるだけでなく、アーティストとして表現するための基礎を養うことができました。
そうして過ごした高校時代の3年間、クラスメイトと衝突したことは一度もなかったと思います。クラスメイト全員が美術・書道の表現を探究しているからなのか、自分以外の人が好きなものを否定することはありませんでした。お互いに干渉しないような関係性で、心地よい雰囲気でした。
――現在のお仕事の内容を教えてください。どのようなやりがい、手応えを感じていますか?
テレビ番組などスタジオセットのデザインをしています。ドラマやコントなど日常的な空間からバラエティ、情報・報道番組などの抽象的な空間まで、さまざまな世界観を作り出す仕事です。高校から大学院まで日本画を専攻していた身としては、立体的にしていく感覚が未知で新しく知ることばかりです。表現者として、平面という枠組みを越えた新しい表現方法を得ていると感じています。見た目のクオリティはもちろんですが、材質やコスト面、扱いやすさなど考えるべきことが多く、まだまだ勉強中です。
――高校時代に学んだことが、現在の仕事にどのような形で役立っていますか?
コンセプトを明確に決めることは、現在の仕事においても改めて大事だと感じています。
私は、高校時代の作品制作でコンセプトを大切にしてきました。コンセプトを決めると「モチーフにこれを取り入れよう」「そうしたらこういう色合いにしよう」「この技法が効果的かも」と自然に制作内容が具体性を帯びていきます。
私の仕事も同じで、デザインを考える時にまず理想のイメージを明確に決めて、その理想に近づくために形を決めたり壁紙や色合いを選んだりするとスムーズです。コンセプトという言葉は、「目標」と捉えることもできると思います。理想的な目標をいかにして達成するかを考える習慣が、大学受験や作品制作を通して身についたのだと思います。

■先輩の声 vol.2

遠藤 美香さん 版画家
  • ■2003年度卒業
  • 日本大学芸術学部美術学科版画専攻
    2007年度卒業
  • 愛知県立芸術大学大学院美術研究科
    油画・版画領域2009年度修了

展覧会をした時、高校時代の先生や友人と
再会できることに喜びを感じます。

――高校時代の美術コースでの学びを振り返って特に力を入れたことはどのようなことですか?
高校に入学する前は、絵は一人で描くものでした。浜松学芸高校で美術を嗜好する多くの同級生たちと制作をして、作業の進め方を改善することができました。
――高校生活全体を振り返って思い出に残っていることを教えてください。
担任の先生が言われた「制服は鎧」という言葉が印象に残っています。「制服はあなたたちを尊ばれる存在であると周囲に認識させあなたたちを守っている」。卒業して制服を脱いだ時、社会で生きていくための苦痛、不合理が現前しました。先生の言葉が想起され、「制服は鎧」を実感しました。
――卒業生の方の目から見た浜松学芸高校の魅力をご紹介ください。
多様な専門学科があることです。私は教育実習で美術造形科(現:美術コース)を担当しました。文化祭で行うファッションショーでは音楽専攻(現:音楽コース)が音響を担当し、美術造形科の他に普通科の生徒をモデルに起用していました。そうして生徒たちの多様な個性を活かした取り組みができるのは、学芸の魅力だと思います。
――版画家としての制作や作家活動に関して具体的に教えてください。また、どのようなやりがいや手ごたえを感じていますか?
絵を描くことは、私の生活において特別なことではありません。好きでやってきたことを勉強してきました。それを続けているだけです。展覧会をしたときに先生や友人と再会できることが喜びであり、やりがいでもあります。
――高校時代に学んだことが、現在の仕事にどのような形で役立っていますか?
私の担任の先生は他の先生に比べると生活面での指導が厳しい方でした。高校を卒業し、新しい環境で生活が始まった時、新たに出会った人と円滑な関係を築くためには、最低限の礼儀作法が必要であると実感しました。そんな時、ことあるごとに蘇ってきたのが先生の指導です。「当時は実感できなかったけれど振り返れば私のことを厳しく育ててくれた恩人だ」という話を聞くことがありますが、私もこの先生に対して同じように感じています。