高校教育

芸術科 音楽 コース

音楽コースの学び 生徒インタビュー

友だちの練習の音が聞こえると、
「自分も頑張ろう」と思います。
甲斐 吉秤/ピアノ専攻

第47回ピティナ・ピアノコンペティション全国大会F級ベスト賞。
第77回全日本学生音楽コンクール東京大会本選入選。

髙林 乙葉/ピアノ専攻

第24回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA オンライン決勝大会金賞・ソリスト賞、アジア大会銀賞。
第46回ピティナ・ピアノコンペティション全国大会F級入選。

長野 歓/ピアノ専攻

第46回ピティナ・ピアノコンペティション全国大会F級ベスト賞。
第33回日本クラシック音楽コンクール第2位。

人前でたくさん演奏することが、成長につながる。
――皆さんが浜松学芸高校の音楽コースに入学した理由を教えてください。
■甲斐:
僕は元々、浜松学芸中学に通っていて、中学生の頃から高校の音楽コースの先生に教わっていました。その先生からいろんな話を聞いて、音楽コースに入ることを決めました。
■長野:
僕も浜松学芸中学の出身です。元から高校の音楽コースに進むつもりで浜松学芸中学に入学しました。
■髙林:
私は学芸とは別の中学校の出身です。高校進学の時は公立高校と迷ったのですが、将来音楽の道に進みたかったので、専門的に音楽を学ぶために学芸に入学しました。
――音楽コースにはどのような魅力や特長があると思いますか?
■甲斐:
音楽の授業が多くて学校でレッスンを受けられるので、たくさん音楽に触れることができます。また、実技のテストなど、音楽の頑張りを評価してもらえる機会が多いことも特長だと思います。
■長野:
それでありながらちゃんと勉強もします。音楽と勉強を両立できることも、魅力のひとつです。
■髙林:
あと、「音楽理論」など、音楽大学に入るための学びが充実していて、その点もすごく魅力的だと思います。
■長野:
合唱の授業などは他の学年と一緒に取り組むので、交流の機会がすごく多いです。音楽コースは上下の学年の仲がいいです。
■髙林:
そんなに先輩・後輩の垣根がある感じではなくて、仲がいいですね。
■長野:
先輩に気軽に相談できます。たとえば「聴音(耳で聴いたメロディーや和音を楽譜に書き起こすこと)」が難しいと思った時に、どうやったら上手くできるようになるかを聞いたりしました。
■甲斐:
そう。たとえば先輩が自分と同じ作曲家の曲を弾いている時に、「こういう感じで弾くといいよ」とアドバイスをくれたり。先輩の演奏を聴くだけでなく、言葉で教えてもらうことでさらに勉強になりました。
■髙林:
他には、土曜日に授業の一環として行われる「サタデーコンサート」も、音楽コースの魅力です。演奏したい人が自分の好きな曲を演奏して、他の人はそれをみんなで聴きます。先輩や後輩の演奏を聴くと刺激になって、「自分も頑張ろう」と思います。
■長野:
人前で演奏する機会が多いので、その場で失敗したとしても「今回はここを間違えたから次はこういう練習をして直そう」という反省ができます。
音楽コースに入って、小さな積み重ねの大切さを実感。
――高校に入ってから、どんなことに特に力を入れてきましたか?
■長野:
中学生の頃までは曲に対してあまり深く考えずに練習していたんですが、高校に入って音楽の歴史などを学んで、「この作曲家がどんな時代を生きてどのような思いでこの曲を作った」とか、深いところまで考えるようになりました。また、音楽理論という授業で習ったことを「今練習している曲に応用できるな」と考えることもあります。さまざまな学びを通して、曲に対する理解が深まったと思います。
■甲斐:
僕はピアノの実技だけでなく、ソルフェージュなども頑張ってきました。
■長野:
音大入試にもつながるよね。
■甲斐:
そうそう。聴音などは入試にも必要ですし、それを頑張ることで実技にも良い影響があります。また、実技をやる中で「ソルフェージュがもっと必要だな」と自覚することもあるので、その結果どちらの力も上がります。小さな積み重ねが大事だなと、音楽コースに入って感じるようになりました。
■髙林:
私はコンクールに一番力を入れました。高校に入ってから、朝や昼休み、放課後など、ピアノに触れる機会がすごく多くなり、音楽を深く学べました。コンクールを受ける時も、ピアノのことを日常的に深く考えながら準備することができました。
――朝は何時から練習するんですか?
■髙林:
練習したい人は7時に来ます。
■甲斐:
7時に学校を開けてくれて、朝礼などが始まる8時半まで練習できるようになっています。
■髙林:
私は元々、本当に朝が弱かったんですけど、学芸に入ってからは毎朝練習に行くことを目標に起きるようになりました。それで朝から指が回るようになりました。
■長野:
放課後も15時40分くらいに授業が終わった後、18時半まで練習ができます。3時間くらいみっちり練習できて、すごくいい環境だと思います。みんなだいたい残って練習していますね。
■甲斐:
みんなが弾けるようにピアノの数がたくさんあります。すごく恵まれた環境だと思います。放課後は個人で練習するのですが、僕はコンクール前の時期などは「ここだけちょっと10分お願いします」と先生にお願いして聴いていただくこともあります。
■長野:
あと、練習している音がまわりから聞こえてくるので、「自分も頑張らないと!」と思いますね。
■髙林:
そうそう。
■長野:
「みんなめっちゃ練習してるな」とか思うことはよくあります。家で練習するのとは全然違うと思います。ピアノって普段は一人で練習するものなので、どうしても孤独になることが多いんですね。でも音楽コースでは、こうやって音楽の仲間と交流することができます。みんな音楽をやっているので、自分の苦しさを分かってくれて、話すことによって気持ちが和らぎます。
コンクールで入賞、その結果以上にうれしかったこと。
――高校に入ってからどんな成長を実感していますか?
■甲斐:
音楽コースでは毎週1回、約2時間のレッスンがあり、同じ先生から3年間通して指導を受けます。一人の先生から一貫して指導を受けることによって、自分の中に一本の芯というか、根の張ったものができます。それができた上で自分の表現ができると思うので、しっかりと基礎を作ることが大切だと感じます。
■髙林:
私はすごく緊張しやすいタイプで、中学生の時もコンクールの前は1週間くらいそわそわしてしまうことがありました。でも、高校に入ってから、フライデーコンサートなどの舞台を何回も踏んでから本番に臨むので、余裕を持ってコンクールに挑めるようになりました。
――皆さんは高校入学後にコンクールで入賞経験があると聞きました。
■長野:
この3人が共通して入賞したのは「ピティナ・ピアノコンペティション」というコンクールですね。コンクールをめざして、みんな切磋琢磨して頑張っています。
■甲斐:
それぞれ自分の目標に向けて頑張っている感じですね。
■長野:
ライバルというより、「みんなで一緒に全国に行こうね」という感じでやっています。
――コンクール入賞の感想を教えてえください。
■甲斐:
普通に「うれしい」という感じです。コンクールが終わって結果が出るまでに何日かかかるので、その数日間に自分の演奏の振り返りがある程度できます。僕は結果というより、「自分の中で演奏がどうだったか」を大事にしてしまうので、「この演奏は楽しかったし、いい感じで弾けた」という時は、結果以上にうれしかったりします。
■長野:
意外とみんなそうだと思います。結果は結果ですけど、どちらかというと大事なのは演奏の反省ですかね。「コンクールで入賞するためにこれを練習する」というわけではなく、勉強のためにコンクールに出ているので。
■髙林:
そこに後から結果がついてくる感じ。
■長野:
そうそう、そういうイメージ。コンクールの結果は良かったと思いますが、それはとりあえず置いておいて、次にまた進む感じです。
■髙林:
私も同じです。自分の中で「どういう風に弾きたいか」という目標があって、それを本番で達成できることはまずないんですけど、少しでも近づけるようになりたいと思っています。それが一番大事にしていることです。
音楽大学でさらに深く学び、将来はピアニストになりたい。
――今後の目標をそれぞれ教えてください。
■甲斐:
僕は漠然とですが、将来はピアノや音楽に関わっていきたいと思っています。大学も音楽系の大学に進みたいと思います。
■髙林:
私は、自分の演奏を聴いてくれた人がちょっとでも心が穏やかになったり、ちょっとでも笑顔になったりするようなピアニストになりたいです。演奏活動をすることが夢なので、音楽大学に行き、できたら留学などもして、音楽を深く学んでからピアニストになりたいと思います。あとは、海外も含めていろんなコンクールに挑戦したいと思います。
■長野:
僕も音楽大学に進んでいろいろ学び、いろんなコンクールにも出て、音楽に携わっていきたいと思います。できたら、自分のリサイタルとかもやってみたいと思っています。
――では最後に、浜松学芸高校の音楽コースに興味を持っている人に向けて、自由にコースのアピールをお願いします。
■甲斐:
個人的に、(ピアノなどの)実技は普通高校に行きながらでもある程度できると思います。でも、音楽コースはそれ以外のことも幅広く学ぶことができます。自分のことで言うと、僕は歌が苦手なんですよ。でも「視唱」などの授業が毎週必ずあるので、苦手なこともしっかり学ぶことができます。それは音楽高校ならではの魅力だと思います。
■長野:
視唱というのは、初見の楽譜を見てすぐ正確に歌うというものです。これも音大入試に必要になります。普通高校では学べないことなので、音楽コースの特権だと思います。
■髙林:
音楽の専門の先生方がたくさんいて、その先生方に教えていただけるのはすごく魅力だと思います。あと、私がすごく楽しみなのが、土曜日の「演奏研究」という授業です。その授業は、外部からピアニストの方などが来られて演奏を聴かせてくださったりします。普段自分が弾いているのと同じ場所でピアノを弾いても、全然違う音色になるので、すごく勉強になります。演奏研究はすごく魅力的なので、これから入学する方にもおすすめです。
■長野:
僕は音楽コースに入学する時、「先輩はこわいのかな」などと考えてすごく緊張したんです。でも実際はすごく優しく迎えくれて、すごく親切に話しかけてくれました。本当にみんな優しくて、毎日本当に楽しいです。みんなが音楽をやっているので、音楽の話で盛り上がることも多く、楽しく音楽を学ぶことができます。

これまでの実績紹介

【2023年度 活動実績】
◆第77回全日本学生音楽コンクール東京大会本選(ピアノ部門高校の部)
  • 甲斐吉秤 入選
◆第42回静岡県学生音楽コンクール(管楽器部門高校生の部)
  • 長谷川釉己 第3位
◆第47回ピティナ・コンペティションF級全国大会
  • 甲斐吉秤 べスト17賞
◆第25回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA 高校生部門アジア大会
  • 髙林乙葉 銀賞
◆第33回日本クラシック音楽コンクール全国大会ピアノ部門高校男子の部
  • 長野歓 第2位(第1位なし)
◆第46回全日本ジュニアクラシック音楽コンクール全国大会(フルート部門高校1年生の部)
  • 長谷川釉己 第1位
◆第46回全日本ジュニアクラシック音楽コンクール全国大会(高校2年生の部)
  • 石川未悠 第5位
  • 清野世羅 審査員賞
◆ヤマハエレクトーンフェスティバル2023 静岡大会(一般部門)
  • 大橋翔永 金賞
◆第57回カワイ音楽コンクール静岡本選
  • 池田風 最優秀賞
◆奥浜名湖国際ピアノフェスティバル(高校生の部)
  • 戸塚琉斗 第1位
  • 渥美光翔 第2位
  • 池田風 第3位
◆第5回浜音協中高生のための管打楽器ソロコンテスト
  • 長谷川釉己 金賞(グランプリ)
  • 高木奏太郎 銅賞
◆第17回静岡県フルートコンクール(高校生部門)
  • 長谷川釉己 第2位

■在校生の声 vol.1

音楽の「楽しさ」「美しさ」を
探究できる場所です。
清野 世羅さん
電子オルガン
(浜松市立南部中出身)
――浜松学芸高校の音楽コースに入学した理由を教えてください。
中学生までは演奏力を磨くために、ひたすら練習に時間を費やしてきました。高校生になったら取り組みたいと思っていたのが、電子オルガンのコンクールで自作曲にチャレンジすることです。曲を作るには、音楽理論など専門的なことを理解して、基礎から知識を積み上げる必要があると思い、学芸の音楽コースで学びたいと思いました。
――音楽コースの学びについて、どのような特徴があると感じていますか?
自分の専攻するコースで専門的に学べることが魅力です。年に数回の実技試験のほか、人前で演奏できる授業が数多く設けられているので、舞台度胸がつきます。また、自分以外の人の演奏を聴くことが良い刺激になり、さまざまな楽曲を学ぶことができます。
――先生方の指導について、特に印象に残っていることを教えてください。
自分の求めている「楽しい」「美しい」を探究することが、一番大事だということを先生から教わりました。コンクールに積極的に挑戦していると「自分を試す」「競い合う」という意識が強まり、目の前の目標だけにとらわれがちです。でも、周りの人とは関係なく、音楽や演奏している曲自体を本当に好きになることが大切であることを学びました。
――イベント面での音楽コースの魅力を教えてください。
定期演奏会やオペラコンサートでは、先生方のご指導のもと学年の枠を超えて生徒全員で一つのものを高い完成度で作り上げます。その楽しさや感動を味わえることが魅力だと感じています。
――自分自身でどんな成長を実感していますか?
また将来の目標を教えてください。
私は歌うことが苦手でしたが、視唱や合唱の授業で生徒一人ひとりに的確なアドバイスをいただく中で、正しい歌い方が身につきました。それによって電子オルガンを演奏する時の呼吸や表現の仕方が磨かれ、演奏力の向上にもつながったと思います。

■先輩の声 vol.1

秋田 茉梨絵さん 作・編曲家:Five Eighth Inc.
  • ■2008年度卒業
  • 国立音楽大学鍵盤楽器専修(電子オルガン科)
    卒業

高校3年間で学んだことがすべて、
作曲の仕事に活かされています。

――学業面で、高校時代に特に力を入れたのはどのようなことですか?
高校3年間は自分の色を探すのに夢中だったと思います。クラシック音楽だけでなく、ロックやノイズ音楽、民族音楽など、引き出しを増やすためにどんな音楽でも聴いて感じて真似していました。
――高校生活全体を振り返って、思い出に残っていることを教えてください。
定期演奏会です。自分でアレンジした曲をグループのメンバーとアンサンブルしました。人数分の楽譜を書いて、音を組み、指示もしたのですが、今の仕事もその延長線上にあります。とても良い経験ができたと思います。
――卒業生の方の目から見た浜松学芸高校の魅力をご紹介ください。
ただ自分の楽器を極めるだけでなく、ソルフェージュや和声法もしっかり学ぶことができます。私は今CM音楽やゲームのBGMを作曲する仕事をしています。15秒という短い時間の中で起承転結を作らなければならないのですが、3年間で学んだことがすべて活かされています。
――高校時代に学んだことが、現在の仕事にどのような形で役立っていますか?
「真剣に遊ぶ」ことの大切さを知りました。たとえば、ただゲーム音楽が好きで終わるのではなく、「このゲームのピコピコ音をエレクトーンでどうやったら表現できるだろう?」「このオープニングの曲はバッハが元ネタじゃないだろうか」など、追求することで得られることが沢山あります。 知ることの楽しさを覚えたおかげで、今も苦なく音楽と向き合えています。

■先輩の声 vol.2

長岡 瑠奈さん フリーランス
クラリネット奏者・広告デザイナー
  • ■2015年度卒業
  • 洗足学園音楽大学音楽学部管楽器コース卒業

フリーランスの演奏家として、
浜松と関東で活動しています。

――学業面で、高校時代に特に力を入れたのはどのようなことですか?
やはり自分の専攻楽器であるクラリネットに力を入れました。それまでは中学の部活でしか吹いていなかったので、レッスンで奏法を一からやり直してもらいました。1週間努力したことをちゃんとわかって褒めてくださる先生だったので、地道な練習でも頑張ることができました。逆に練習の仕方が甘かった時に先生に言われた「できてないのはやってないのと同じ」という言葉は今でも心に刻んでいます。本番経験を積むためにコンクールも積極的に受けていました。
――高校生活全体を振り返って、思い出に残っていることを教えてください。
高校入学したばかりの頃、周りのみんなの演奏が上手すぎて練習室でこっそり泣くほど悩んでいた時に、レッスンの先生がそれをなぜか察してくれて、レッスンの時に「これから絶対上手になるから他の人と比べたりしないで自分のペースで頑張ればいいよ」というような話をしてくださった事がありました。それからは自分の実力を磨くことを第一に考えて練習に励んだのですが、卒業する頃にレッスンの先生が「言った通り上手になったでしょ?」と言ってくださったのが、とても嬉しかったです。
――卒業生の方の目から見た浜松学芸高校の魅力をご紹介ください。
私は学芸で音楽の基礎的な力を身につけることができたと思っています。学校のカリキュラムでレッスンを受けたりソルフェージュや楽典について学べたりできるので、音大を目指すにはぴったりの場所だと思います。また、ソルフェージュは個々のレベルに応じてクラス分けされていたのがありがたかったです。高校でかなり先取りして学べた印象があったので、音大に入学してからも落ち着いて授業に臨むことができました。
――現在のお仕事の内容を教えてください。
また、どのようなやりがい、手応えを感じていますか?
今はフリーランスの演奏家として、浜松と関東方面で活動しています。アニメ『響け!ユーフォニアム』の公式吹奏楽団のメンバーとして演奏会やレコーディングに参加したり、仲間同士で自主企画の演奏会を行ったりしています。たくさん準備を重ねた演奏会が無事に終わった瞬間の達成感は他には代えがたいものです。大人になっても挑戦、勉強を続けられる音楽をこれからも大事にしていきたいです。
また、在宅ワークでweb広告デザインの仕事もしています。個人的に演奏会のフライヤーデザインをご依頼いただくこともあり、今年開催された学芸の新人演奏会のフライヤー制作をお願いしていただけた時はとても嬉しかったです。デザインはほぼ独学ですが、フライヤー制作に関しては演奏会を実際にやっているからこそ出来ることもあると自負しています。
――高校時代に学んだことが、現在の仕事にどのような形で役立っていますか?
高校で音楽の力をすごく伸ばしてもらえたと思っていて、その上達したという実感と経験が、「なんでも頑張ったら出来るようになるんだ」という自信になっています。高校時代の繋がりで演奏会出演のお誘いをいただいたり、スタッフなどの仕事をいただいたりすることも多いので、出会った人とのご縁に今でも助けられています。